ラジアルポンプ式マスターシリンダ 2008/7/5
(7/21 追記)(2010/10/18 追記)

 
お知らせ

 

マスターシリンダーがブリュードスクリューの根元あたりから割れました。
固いはずのアルミ鋳物にひびが入ってぱっくりと割れてます。

購入時からずっとブレンボの製品だと信じていたのですが、この製品は実は本物を型取りして作った粗悪なコピー品らしいという事も分かりました。

 詳しくはこちらのページ:https://bikeparts.exblog.jp/10799996/

2010年10月現在、同じものと思われるマスターシリンダーがヤフオクで、 500 円程度からと、自分が買ったとき以上に信じられない様な低価格で出品されていますが、通常使用で2年程で本体が割れてしまうというとんでもなく危険なものだという事が分かりましたので、命の惜しい方は手を出さない様にお願いいたします。

 

 
1.はじめに

フロントブレーキだが、キャリパーの清掃とシール交換はしたものの効きは今イチ。
ON-OFF ブレーキでもう一つ細かな操作ができず、どの辺りでロックするのか掴みにくいのでパニックブレーキも思い切って掛けることができない。

一度マスターシリンダーのオーバーホールをしないといけないのかなぁと思っていた所、悪い友達からのお誘いで、新しく手に入れたという SRX を見に行く。

その SRX に付いていたのがブレンボのラジアルポンプ式マスターシリンダーと住友のモノブロックキャリパーのセット。

試しにのせてもらった所、ブレンボのラジポンの握り心地に心を奪われてしまいました。

 
2.まずは、買う

ラジアルポンプ式のマスターシリンダーとなると、ブレンボの新品は目ん玉が飛び出るような値段である。そんな物を買った日には、かみさんに息の根を止められかねない。

しかし、あの握り心地を知った後では横押しタイプは目に入らず、といってセミラジアルで我慢はしたくない。そう思いながらオークションを探していると、ニッシンのラジアルポンプならある程度安値であるじゃありませんか。
おまけにニッシンならブレーキスイッチもミラーホルダーも付いている。

同じラジアルポンプなんだからブレンボとそれほど性能は変わらないだろうとほぼ心に決め、買う前にもうちょっと調べておこうとネットで評判をあさっていたら、SRX に付けている人はいて良いという評価は多けれど、結構自己満足的な評価が多い。
極めつけには、いつも参考にさせてもらっているここではニッシンのマスタ(ラジアルじゃないけど)は酷評されていて、ニッシンのマスターに大きな不安が生じてくる。

それでもニッシンは安いしなぁ、と思いながら悩んでいると、B級品だけど、ブレンボの 16x18 のラジアルマスターが結構な安値で出て、ニッシンのよりも安い価格で落札されている。

ブレンボはブレーキスイッチとミラーホルダーが無く、専用品をそろえるとその2つだけで1諭吉が飛んでいってしまうのだが、ブレーキスイッチは自作して、ミラーホルダーは汎用品を使えば、合わせて2漱石程度で済む。

おっしゃぁ〜! ブレンボいってまえ!

安めに上限を決めて、いざ入札。そして流れが良かったのか、その値段で落札してしまったのでした。

落札したブレンボのラジアルポンプ式マスターシリンダー。もちろん鋳造タイプ。鍛造タイプなんでブルジョアな物は買えません。

ブリュードスクリューが妙に大きくって飛び出ているが、こんな物だと思ってた。後々問題になるとは...。

これと一緒にリザーバータンクとパイプも付いてきた。

 
3.そしてスイッチ作りだ

ブレーキスイッチだけど、レバーの作用点の所にあるネジでリミッタスイッチを押すようにするのが常套手段なんだそうだけど、レバーの位置を変えるたびにスイッチを調整するのがちょっといや。

といってレバーを加工するのも調整つまみの先までスイッチを飛び出させるのも嫌だったので、金具を作って調整つまみの動作を後方に伝え、それでスイッチを押す事を考える。(色々考えたけど、それが一番良さそうだったので)

これはマスターの裏側。

支点のピンには 3mm のネジが通る穴が空いていて、先端はクリップで留まっている。

このクリップをEリングに変更して、スイッチプレートを取り付けようと考えた。

調整つまみはピンで留まっている。

レバーを交換するにもこのピンを抜いてつまみを外さないといけない。

なのでピンを抜いて、かわりにベータピンで固定。

ピンは精密ドライバを当てて、ペンチの頭でこんこんと叩いて抜いた。

これが作った金具。

右が試作版で、左が完成版。

1mm厚のアルミ版で作ったが、ちょっと柔い。

金具とスイッチを取り付けた所。

ちゃんと使える物の、大分動作がセンシティブ。

 

 
4.取り付け

スイッチも完成したし、いよいよ取り付けである。

まずは現在のマスターを外し、ブレンボのラジポンを付けてみる。ミラーホルダーは友人からせしめた汎用品を使用。

まず上のネジを軽く締めて、そして下のネジを....、嵌らない。

ブレンボの取り付けネジは上下同じ位置にあるのではなく、下側が右にオフセットされているので汎用品では合わない。

なんてこったい。

どうしようもないので一旦マスターシリンダーを元に戻し、財布を握りしめて大急ぎで最寄りのバイク7に行く。

うう、合致するのは POSH のアルミ削り出ししかないぞ。3,990 円、値引き無しだ。

ええい!仕方ない。財布からなけなしの5千円札を出し、一路家路を突っ走るのだった。

さすがに買ってきた奴はバッチシ合致。そこでまずは純正マスターの蓋を開けてフルードを吸い出し、ボロギレで養生してバンジョーボルトを外す。

純正マスターを外して代わりにブレンボを取り付け、ブレーキホースを付けようと思うが、バンジョーの向きが違うのと長さが少し足りず、結構苦しい。

三つ又へのブレーキホースの固定金具を外し、ちょっとホースを上に引きずり上げ、ぐいっとホースをひねってまわせばなんとかと付ける事ができた。

ちなみにバンジョーボルトは純正の物はピッチが合わないので、ブレンボ用の 1mm ピッチの物をあらかじめ購入済み。

問題はバンジョーの厚みが 8mm しか無い事だが、これはバンジョーボルトに付いてきたワッシャともとからのワッシャを2枚重ねで入れる事で解決。

で、ブツもホースも付いたので、リザーバータンクを付けていよいよエア抜き。

このブレンボはマスター本体にブリュードスクリューが付いているのでエア抜きは楽なはず。と思ってリザーバタンクにフルードを満たし、マスターのブリュードスクリューにホースを付けてブリュードスクリューを締め込んで....なにこの変なしまり方。

とりあえずぎゅっと締めて、レバーを数回握って...なんか入って行く感覚無いし、リザーバータンクのフルード減ってないぞ?
ブリュードスクリューを緩めてエアーを....全然吹き出している感じがない。

何回握ってもうまいこと行かないので、マスターのブリュードスクリューはあきらめて締め込んでおき、キャリパー側からエア抜きをトライ。

レバーを数回握って....相変わらず入っていく感覚がない。
ブリュードスクリューを緩めてエアーを....ほとんどフルードが出てこない。

全然うまく行かないので、キャリパー側のブリュードスクリューに注射器をくっつけて吸い込んでみるが、フルードじゃなく、エアーが出てくる!?

「?」の状態でマスター側のブリュードスクリューに注射器をくっつけて吸い込んでみると、やっぱりフルードが出てこない。

ここで「もしかして」と思ったのが、マスターシリンダーに付いているブリュードスクリューの形態。ネット上の写真やバイク7の実態を見ても、こんな巨大なスクリューが付いているのを見た事が無い。おまけにこの妙な締まり具合。これはもしかするともしかするぞと注射器で逆に空気を送り込んでみると、きちんと締め込んであるはずのスクリューからぶくぶくと泡が出てくるではないか(T^T) 。

とんでもない物を掴まされたなぁと思いながら、致し方ないのでブリュードスクリューとしての機能はあきらめ、スクリューに液体パッキンを塗って思いっきり締め込んだ。

注射器で空気を送り込んでも大丈夫だったので、これでどうかとエア抜きを開始すると、今度はレバーに軽く重みがかかるではないか。
おまけにリザーバータンクからフルードが減っている。

キャリパー側のスクリューを緩めると、ちゃんとエアまじりのフルードが出てくる。

しばらく続けていると、今度はレバーを握り込んだときにリザーバータンク側にエアーが出てきた。マスターを軽く叩いたりしながらそのエアも抜いていくと、ブレーキレバーは気持ちのよい固さになり、ようやくエア抜き完了。

まったくもって、なんてこったい。

で、ブレーキはOKになったのだが、繊細すぎたブレーキスイッチはやはり耐え切れず、振動で位置がずれたりしてまともに動作せず。

これはもう取り付け位置をあきらめるしか無いと、スイッチを前方に取り付けることにした。

スイッチを押す金具も 2mm 厚のアルミで作り直し、今のところ問題なく、頑丈に動作中。

作り直したスイッチ。

つまみの所のに付けた金具でスイッチを押す形態に変更。

今度は頑丈。

リザーバータンクステーも作って、完成。

 
5.ブレーキスイッチ変更(7/21 追加)

ブレーキスイッチの台座はとりあえず 1mm 厚のアルミ版で作っていたので、それを後日 2mm 厚の物に変更して強度を稼ごうと思ったのだが、ブレーキレバーの調整が意外とやりにくいのと、レバーの調整をすると台座や他の部分が動いてスイッチの入る位置がずれてしまう、且つ調整しにくい事が判明。

また友人より「ぶさいく」とのクレームを受け(これが一番大きい原因か?)、またまた方式を変えて作り直す事にする。

ブレーキスイッチを付けるのに色々悩むのは、元々ブレーキスイッチを付ける事が考えられてない物であるため、ブレーキレバーの調整位置によって影響されない、一定に動く部分(ブレーキスイッチを押す部分)が存在しないからである。

これを解決する一番の近道は「油圧スイッチ」なのだが(レバーの位置に関係なく、一定の油圧を超えると作動するから)、反応が鈍いとか、信頼性が低いという話を聞いていたのでもう一つ乗り気にならない。

機械スイッチを操作する為には、どこかレバーの状態によって動く部分が必要なのであるが、ブレンボのラジアルマスターだと、一つはレバー自身、もう一つはポンプを押すプッシュロッド部分で、ロッド自体は使えないので、前方の位置調整つまみかロッド中央下部の固定ネジの取り付け部分を使うことになる。

またそのスイッチを操作する部分が動く長さとスイッチボタン自体の押し込める長さが一致せず、どこかにその差を吸収する遊びを作らなければならない。
これはブレーキング時にレバーを握り込む量は不均一だが、放したときに戻る位置は(位置調整を考慮しなければ)一定であるという事から、ブレーキを放したときにスイッチが押され、握ったときにスイッチが離れる、という機構が合理的である。(市販品はほぼそういう形式になっている様である)

スイッチを押す機構で最もストレートなのはレバーにスイッチを押すプレートをネジ留めする事だろうが、これはレバーを加工することになり、レバーを取り替えるときには再加工が必要となる。

次によくあるのが固定ネジの取り付け部にスペーサーを噛ませてサイズを大きくし、それでスイッチを押す方法だが、これはスペーサーを手に入れるのと、固定方法が難しい。

なので自分が採用したのは前方の調整つまみを使う方法だが、これは前方にある為、そのままでは必然的にスイッチがもっと前に出っ張ったりする。

そのためにロッドを後方に引っ張ったり色々考えたのだが、そもそもが精密な動きをする物ではなく、また大排気量シングルバイクという振動の固まりの様な環境の元では、あまり精密な機構、またやわな構造では持たないというのが、今までの失敗。

そして今までの失敗をふまえ、極力頑丈&シンプルにするため、位置調整つまみにより、バネでスイッチを引っ張る形式に変更を行った。

スイッチの取り付け台は 2mm 厚のアルミ板で作成し、レバーの支点に 3mm のネジで共締め。3カ所のカシメを作って動かないように固定。

スイッチのレバーに 1mm のドリルで穴を開け、位置調整つまみに付けたプレートとの間をホームセンターに売ってたバネで接続し、スイッチを操作するとともに、バネの伸びで遊びを吸収させた。

再度作り直したスイッチ。

つまみの所のに付けた金具から、バネを介してスイッチを引っ張る形式に変更。

スイッチが入る位置の調整は、つまみ側のアルミプレートを軽く曲げる事で行うといういい加減な物だが、壊れたら作り直したらいいやぁという安直な考えである(笑)。

作り直してから今までの所、調子よく動作している。

ただ、一点だけ問題が発生。

それは、

ブレーキホースがスイッチに干渉する (T^T)

という事。

仕方が無いので取り回しを変えたが、そうなるとホースが短くって通常の取り回しラインには収まらず、致し方ないのでフロントフォークにそわせて直接キャリパーにホースを下ろすという事をしている。

嗚呼、なるったけ早く、もうちょっと長く、且つ角度の付いたバンジョーのホースに交換しなければならない。(うう、軍資金が...)

致し方ないので、今はこの状態。

 
5.使い心地

ラジポンを付ける事が目的ではなく、もちろん使う事が目的。

で、使い心地だが....

天国です

今までのブレーキは何だ! あえて言おう、カスであると!

キャリパーはノーマルだし、ホースも純正のゴムなのに、ものすごくフレキシブルで握った通り、緩めた通りの反応をしてくれ、ロック寸前までの動作も思いのままという感じである。

軽く周辺を走って、引っ掛けブレーキからフルブレーキまで色々と試してみたが、これほどまでにブレーキのタッチと効きが変わるとは思わなかった。(パッドなんてベスラーのグリーンパッドなのに)

ディスクプレートが焼けて変色するぐらいにブレーキを効かせることができるなんて、初めての経験である。

もし SRX 乗りでブレーキで悩んでいる人がいるのなら、自信を持ってお勧めする。

ぜひブレンボのラジポンにしなさい

世界が変わる事請け合いである。