番外:スウェーデンハウスのうそ・ほんと

色々悩んで考えて、営業さんにもそそのかされて、とうとうスウェーデンハウスで家を建ててしまった訳だが、実際に住み始めてみると色々と思いと違う部分も分かってくる。

より良かった所もあればより悪かった所もあるが、夢を大きく見ていた分、より悪かったところが目に付くのかな。


1.本当に暖かいのか?

スウェーデンハウスの売り文句は、一言目には高気密・高断熱の暖かい家なんだが、果たしてどうなんだろうか。

うちは2月末に引き渡されて3月中頃に引っ越したのだが、引き渡された時にはとにかく家の中が冷え切っていて冷たく、ものすごく寒かった。家の中にいるよりも外に出た方が暖かい日も多かったぐらいだ。

また、当初は主暖房の薪ストーブが使えなかったため、ホットカーペットとエアコンで暖をとっていたのだが、ホットカーペットの上とエアコンの吹き出す風が当たる部分は暖かいのだが、その他の部分は床も冷たく壁も冷たく、空気まで冷たくて寒い。1階と2階の温度差も激しく、「家中どこでも同じ温度」というスウェーデンハウスの売り文句はなんだったんだと言うような状態だった。

しかし住み始めてしばらく経ち、薪ストーブを使い始めると大夫状況は変わりはじめる。床も空気の冷たさもあまり感じなくなり、1階と2階の温度差も少なくなってくる。ここで初めて「この家は温度を閉じこめる魔法瓶のような造りなんです」という営業さん、設計さんの言葉を実感する。

最終的には、みぞれ降る中を帰ってきて家の中に入るとほんのりと暖かい、床に素足でもあまり苦じゃない、と言うのを実感できるようになったから、やっぱり暖かい家ではある。ただしちゃんと暖房を焚かないと寒いし、夜暖房を落とすと朝方はそれなりに冷えてくる。何もしないまま「冬でも暖かい」、と言うことは決してない。

でも実家の純和風建築のように、ちょっと出かけて帰ってきたら家の中が冷え切っていて死にそうになる、と言うことは一切無いですね。(さすがにそうだったら詐欺だよなぁ)


2.スウェーデンハウスは暑い?

さて、冬は暖かいと言うスウェーデンハウスであるが、日本の夏の蒸し暑さはどうなんだろう。

今年の夏は、炭火で焼かれているような8月のじりじりした暑さと、蒸し器で蒸されているような9月のむしむしした暑さの2種類の暑さを味わされたが、どちらにせよ、

「夏はやっぱり暑い」

当たり前と言えば、当たり前である。

で、本題。

うちは閉め切るのがあまり好きではないので基本的に窓を開けて風を通す生活をしているが、外が焼け付くような暑さであっても、風さえ通れば涼しくって気持ちよく過ごせる。以前に住んでいたマンションのように「壁が熱い」という事も無く、木陰にいるようで快適。(でも風が通らないとやっぱり暑い)

そのように「風が通れば涼しい」という経験をしていたので、引っ越して最初の夏、帰ってから窓を開ければ大丈夫だと思って家を閉め切ったまま2、3日旅行に出かけた。

ところがどっこい、恐怖の魔法瓶住宅のスウェーデンハウス。

帰ってから窓を開けて風を通したが、空気は外の涼しいものに入れ替わるのに、全く家の中が冷えてこない。

こりゃ駄目だと思ってエアコンを動かしたんだけど、エアコンは一生懸命冷たい空気を吹き出すのに、やはり家の中が冷えてこない。それどころかエアコンの風が当たる所は空気が冷たいのに、壁や床の近くはまるで遠赤外線でも出ているかのように空気がポカポカと暖かい。

結局家中のエアコンをフル稼働させたんだけど、それでも家の中が冷えてきたのは大分経ってからだった。

どうやら家を閉め切って出かけた為、家の中がしっかりと暖まってしまったようである。

この経験をしてからは、外に出かける時には2階のエアコンを1台、28度で運転する様にしている。こうしていると、家に帰って来た時にむちゃくちゃ涼しいという事は無いけど、リビングのエアコンを動かしたらすぐに冷えるぐらいの室温にたもっていてくれる。

またその2階のエアコンが留守中ガンガンブン回っているのなら論外だが、帰ってくると最弱でそよそよと運転しているだけで、室外機は停止している場合もあるぐらいにしか動いていない。


ちなみに、蒸し暑い時はやっぱりスウェーデンハウスでも蒸し暑い。

梅雨時のジメジメしている時や、夏の雨が降りそうなジメジメした天気の時等は、やっぱり家の中もジメッとしている。

とは言え、マンションにいた時の様に窓が結露してぐしゃぐしゃになるとか、壁が結露してカビが生えてくるなんて事は一切無い。

この点は、さすがスウェーデンハウスである。

 

3.家のどこでも同じ温度?

スウェーデンハウスの売り文句の一つに「家中同じ温度です」と言うのがある。

一般的な住宅のように玄関や浴室、脱衣所が「寒い」という事が無く、ヒートショックを起こさないという営業トーク(笑)を聞かされる。確かにその通りなのだが、ちょっと誇大広告気味の部分もあるんじゃ無いかとも思う。

まず2階建ての場合、1階と2階では結構温度差がある。また同じ階でも部屋によっては大きく温度差がある。ある意味当たり前の話ではあるが、大きく繋がった部屋間の温度差は少なく、区切られて奥まった部屋の温度差は大きい。

また隣り合い、繋がった部屋であっても、梁の出っ張り具合等で結構温度差ができる。特にうちではキッチンがリビングダイニングと繋がったセミオープンタイプになっているのだが、空気の流れとしては意外と閉鎖空間になっており、ハッキリ言ってIHにも関わらず夏場は暑い。

エアコンの位置もリビングとキッチン側に半々で冷気が流れるように考えたつもりだったのだが、梁の下がりと防煙壁の下がりで風の流れが阻害されて届かなかったようだ。また 24 時間換気の吹き出し口がキッチンには無く、その点でもキッチン内の空気の動きが非常に悪くなってしまった。

2階においては主寝室が独立した部屋になっているのだが、ここが家の中で一番暑く、また一番寒い。これは部屋の形状が四角ではなく、入り口から短い通路を通って奥の部屋に行くという形になっている為、他の部屋と大きく空気の流れが遮断されている為だと思われる。

温度差はまた、同一階よりも、1階と2階との間で大きい。24 時間換気システムも1階と2階のシステムは独立しているため、上下階の空気を交換する作りにはなっておらず、階段部の対流と人の移動による空気の撹拌、また2階の床(1階の天井)を通して温度交換が行われるのであるが、積極的な物ではない。そのため冬は家族が集まり暖炉を炊く1階の方が暖かく、夏はエアコンを運転している階が涼しいという状態になる。

このように、いかなスウェーデンハウスとはいえ、空気の流れが寸断されている部分では室温が大分異なる。うちではようやく空気の流れが寸断されている箇所が見えてきたので、扇風機とサーキュレータを使い、その場所の空気を動かす事で室温の一定化を図っているが、根本的にはやはりそれを考慮した設計が重要であるとおもう。

要は良い設計さんと巡り会えるかが運命の分かれ道になるんだろうなぁ。

等々色々言いながら、一般の家と比べると室内の温度差が非常に少ないのは確か。

冬場、「悪くならないように涼しい所に置いておいて」という言葉に非常に困ってしまうのが、スウェーデンハウスである。

 

4.遮音性の高さについて

スウェーデンハウスの営業さんの売り文句の一つが「高い遮音性」である。

住宅展示場にも、ガンガン音を鳴らしているテープレコーダの音が窓を閉めるだけで「ほら、ほとんど聞こえません」という実験装置が置いてあり、道路に面した窓を閉めると外を走る車の音がほとんど聞こえなくなると言ったデモンストレーションもやってくれる。

モデルハウスに体験宿泊した際も外を走るバスの音がほとんど聞こえず、「おお!すごい!」と思っていたのだが、実際に自分の家に住み始めると、意外と停留所から出発するバスのエンジン音や爆音マフラーの改造車が走っていく音が聞こえ、低周波振動も感じる事に気がついた。

その音で目が覚めるとか振動が不快だというレベルではなく、静かにしているとバスが発進したことが分かる程度の音ではあるが、散々スウェーデンハウスの遮音性を吹き込まれて盲目的に信じていた身からすると、「え〜、聞こえるじゃない」とちょっと期待はずれであった。

またお風呂の中で子供が大泣きしていると、2mほど離れた深夜の道路(車通らず)では「あっ、泣いてるね」程度には声が聞こえる。ただ、これは窓を伝って声が聞こえているというよりも、お風呂の換気扇のダクトを伝って声が聞こえているという感じである。

ところで外からの音の進入や、外への音漏れに対する遮音性は非常に高いと言えるスウェーデンハウスではあるが、宅内の音に関しては相当遮音性が低い、と言うか良く聞こえる。

2階に居ては1階の台所で包丁がまな板を叩くトントンという音が響き渡り、1階に居ては2階の子供部屋でプラレールを走らせる音がゴロゴロと、まるで遠雷のように響き渡る。

これはドアが少なく空間が繋がっている、1階の天井(2階の床)が熱を通しやすくするために薄くなっている、そして外から入ってくる音が少なく、家の中の音がごまかされないというスウェーデンハウスの特徴のために仕方ない(納得して購入した)点ではあるが、さすがに子供が2階でプラレールを走らせたときに、1階の天井がまるでサブウーハーのように重低音でゴロゴロ響くのだけは予想外。他の音はそこまで響かないので、たまたまプラレールの走る音が1階の天井の空洞部分で共鳴してしまっているようだ。(共鳴型スピーカー?)


5.健康住宅なのか?

スウェーデンハウス自身が売りにしている「健康住宅」であるが、確かにモデルハウスに入ると木の香りがして、空気もからりと乾燥しているように感じて気持ちが良い。営業さんも体に悪い化学物質が少ないとか使ってないとか色々と説明してくれる。

オフィスのタバコの煙で喘息になりかけて、空調のほこりっぽい風で鼻水が止まらなくなって、建て売り住宅や家具屋を見に行くとそこの匂いで頭痛を起こす私にとっては、化学物質が少ない家は理想と言うよりも必須である。

と言うことで営業さんの甘言に乗ってスウェーデンハウスで家を建てたわけだが、確かに建築中は木の香りに満ちあふれていた。でも、結構合板を使っているぞ。そもそもスウェーデンハウスの「木質パネル構造」って接着剤を使った合板の箱じゃないか。

それでも木の匂いしかしないので安心していたら、フローリングを貼るのに接着剤を使っているのを知る。

それでも特に変な匂いもないので安心していたら、クロスを貼る段になって、「なんじゃこりゃぁ」 物凄い溶剤の匂いに家の中が満ちあふれている。

クロス張りの下地作りでねじ穴などを埋めるのだが、この際に使っているパテが有機溶剤を思いっきり使っている。現場監督は「しばらくしたら木の匂いが勝ってきます」と言ったけれども、この溶剤の匂いが引き渡し後も中々抜けず、毎日寒い中、全ての窓とドアを開けっ放しにして空気を入れ替え続けるという羽目になった。(おかげで家の中が全然暖まらなかった)

結局ある程度匂いが収まったのが一ヶ月を過ぎたぐらいからで、三ヶ月近く経った今でも、玄関収納やクローゼットの中はまだ溶剤の匂いが抜けきっていない。

施工性や施工後品質の点から有機溶剤を使ったパテを使用していると思うのだが、この点に於いてだけはスウェーデンハウスの「健康住宅」という売り文句に大きく疑問を感じる。だって、家のごく一部じゃなく、家の、それも人に向き合う面の全てにこのパテは使われているのですからね。

素材の扱いに関してもう一点。

以前に住んでいたマンションの合板フローリングに嫌気が差して、予算を遣り繰りして安物ながら無垢材のフローリングを入れたのだが、美装工事でまるで合板のフローリングのように表面を樹脂コーティングでつるつるのぴっかぴかに仕上げられてしまった。

フローリング材のメーカが樹脂コーティング指定しているというのと傷が付きにくくするためだと言うけれども、傷が入るのも反りや歪みが出るのも納得した上で風合いや肌触りを優先して無垢材を選択しているのだから、もうちょっと自然素材を生かすやり方があるのじゃないかと思う。

この辺り、「自然派住宅」とか「健康住宅」等よりも、施工性(効率)や見栄えの良さ(客からのクレームの減少)を優先させてるなぁと感じるところ。

ちなみに24時間換気システムに関しては、何かあまり必要性を感じない。 家を閉め切って換気システムを動かしているよりも、昼間に短時間でもさっと窓を開けて風を通した方が断然気持ちよく過ごすことが出来る。 逆に、そういう意味ではスウェーデンハウスは健康住宅なんだろうな(笑)。


6.自由設計

営業氏の売り文句に「スウェーデンハウスは自由設計ですので、お好きな様に建てることが出来ます」というのがあるが、この言葉には色々と落とし穴が仕掛けられている。

先に結論を言うと、確かにスウェーデンハウスは自由設計である。が、その自由が主に構造上の理由で制限され、自由にならない事が多い。


まず、スウェーデンハウスの家は木質パネル工法で造られている事による制限が非常に大きい。

在来工法(木造軸組工法)が尺モジュール(約90cm)であるのに対して、スウェーデンハウスは120cmモジュールを採用している。そのおかげで廊下幅などに余裕が出るのだが、問題はこのモジュールサイズが60cm単位でしか組み合わせることが出来ない点。

在来工法なら数cm単位で部屋の大きさや壁の位置、延いては家の大きさを調整できるのだが、スウェーデンハウスでは大きくするにも小さくするにも60cm単位でしか調整できない。その為、あと10cm広げたいとか狭めたいと希望しても、設計氏に申し訳なさそうに、丁重にお断りされてしまう。

またパネルを組み合わせで作られる箱で家の強度を保っているために、スウェーデンハウスの作りは複数の箱の組合せになる。

例えばリビングとダイニングを一つの大きな箱、和室と玄関をもう一つの箱、そして洗面所と風呂・トイレを一つの箱と区切り、3つの大きな箱の組合せで1階が形作られる。そしてこのそれぞれの箱の強度を保つために、必ず60cm以上の幅の角がないといけない、箱の各辺の60%以上は壁(構造壁)になっていないといけないといった縛りがあり、どの様にがんばってもこの原則を覆すことが出来ない。

これらの事由で微妙に子供部屋が大きく、主寝室が小さくなってしまったり、欲しかった玄関納戸を諦めてクローゼットにしたり、玄関脇の通気用の窓が付けられなかったりと、「自由設計とちゃうやんか!」と叫びたくなる事態に何度も遭遇しました。


次に窓の制限。

「木製サッシュ3層ガラス窓」はスウェーデンハウスの大きな売りで、確かにその質感も性能も満足する物であるのだが、如何せん「種類と取付位置」に制限が多い。

特に種類については横長の物が少なく、キッチンに明かり取りのために欲しかった窓を「サイズがありません」で諦めざるを得なかったのは非常に心残りである。

また取り付ける位置についても「壁モジュールの端から30cm単位」と言った制限があり、60cm壁の中央に30cm幅の窓(端から15cm)と言う取付方が出来ず、出来るのは30cm壁+30cm窓というもの。

この所為で和室に欲しかった風抜きの窓を諦めざるを得なかった(無理矢理に作っても、壁にくっついた窓というのは不細工すぎるし)。


そして高気密・高断熱を守るが為の制限。

スウェーデンハウスと言えば「高気密・高断熱」であるが、とにかく何かしようとすると、「機密性が云々」、「断熱材が云々」と色々なところで制限される。

スウェーデンハウスの断熱方法は家全体をグラスウールで囲んでしまうという方法論であり、その為に壁の中にはもちろんぎっちり、床下にも分厚いグラスウールが隙間無く敷き詰めてあり、天井裏にはふかふかにキューブ型のグラスウールが吹き込んである。そして壁や天井の隙間を極力無くし、室温が外気に影響されないようにしている。

そこで、ロフトが欲しい、屋根裏収納が欲しい、天窓が欲しい、斜天井が欲しい、と言った希望は、「天井の断熱が難しくなるのでおすすめしません」と、床下収納が欲しい、フロアーコンセントを付けたい、外に面した壁にエアコンを付けたいと言った希望は「機密性が損なわれます。断熱材が入っているのでおすすめしません」と丁重に拒否される。

ううっ、おかげで余裕を持った収納とか、明るい廊下とか、パインを貼った斜天井を見上げながら眠るとか、秘密基地とか(?)、色々と諦めざるを得なかったぞ。


最後に、スペックが一律であるが故の制限。

スウェーデンハウスの良いところであり、且つ納得せざるを得ない悪いところでもあるのは、基本的な仕様や使っている部材が一律である、という所である。

スウェーデンハウスで立てる限りは、どの家でも同じ性能を持った壁・窓が使われ、同じ高気密・高断熱性能を提供してくれるのはすばらしい部分であるのだが、例えば温暖な地域で、それほどの気密・断熱性能を必要としなくても、スウェーデンハウスではスペックダウンさせることは出来ない。悪く言えば不必要な高スペックの仕様・部材が使われた、無駄に高価な商品を買わざるを得ないとも言える。

まあこの点に関して言えば、その無駄かもしれない高性能を求めてスウェーデンハウスを選んでいるのだから、文句は言えないんだけどね。デザインだけ同じのが欲しければ、在来工法で、窓だけ同じトップターンを使うという建て方も出来るわけだし。



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