接触編
2006/01/09

1.とにかく物が収まらない

結婚して入ったマンションは3LDK。夫婦二人で生活するには十分な広さだし、子供ができてもそれなりに生活して行けるだろうと考えていた。

ところがばってんぎっちょんちょん、第一の誤算が夫婦そろって物持ちだった事。第二の誤算が二人とも整理が大の不得意であった事。そして第三の誤算が子供が二人になってしまった事である。(まあ一応計画通りなので、二人目ができた事自体は別に誤算ではないのだが)

マンションのご多分に漏れず収納スペースが少ないのに加え、二人しての片付けベタが災いしてどんどん生活スペースが狭くなって行く。このままでは一家四人ともあふれ返る荷物に家を占領されて住むスーペースが無くなってしまう、という危機感に苛まされて、もっと広い所に移る事を真剣に考える事にした。(それよりも「片付けろよ」という突っ込みは無しね)

住み替えるとなるともっと広いマンションか、いっそ一軒家を考えるかだが、子供時代から色々な所に住んできて思うのは、やっぱり集合住宅は性に合わない。車を洗う、スキー板を磨く、バイクをばらす、エッチングの廃液を処理する(^^; 、はたまたシャボン玉を飛ばす等々、色々な事がマンションではできない。(おかげで相当ストレスが溜っている)
やっぱり小さくても、気持ちだけでもいいから庭があって、駐車場のある一軒家がいいよなぁ。また自分の経験から子供を転校させるのは極力避けたいので、住み替えるタイミングとしては、上の子が小学校に上がる時がいい。

という事で、子供が小学校に上がるまでに家を買う、という方針で計画開始。

2.さて、何から始めよう

家を買うと言ってもそこは素人の悲しさ、どこから手を付ければ良いのかよくわからない。これがお大尽様ならさっさと不動産屋に行って「適当な物を見繕ってくれ」と言うだけなんだが(いや、お大尽ならそもそも自分から出向かずに呼びつけるだろうな)、悲しいかな庶民(それも決して中の上ではない)の身、取り敢えず新聞広告でも見るかなぁ。

いざその気になって眺めると、相当な数の不動産物件が広告に入っているものである。
でもそうやって広告を眺めていて、ようやく分かってきたのは「自分がどんな家に住みたいか分からない」という事。(無知の知だね、えらいえらい)

じゃぁどうしようかと少ない脳みそを振り絞って導きだされ たのは、「人の家を見て考えよう」という安易というかいい加減と言うか、本当に考えたのかお前、やる気あんのかという結論である。

と言っても、じゃあどこで家を見たら良いのかは全然考えてない(このあたりがやはり浅はかな所であるのか)。でも何もしない訳にもいかないのでまずは近所をうろついてみるが、うちの近所はだいぶ古い住宅と新しい集合住宅ばかりでほとんど参考にならない。(後々不動産屋に聞いて分かったのだが、このあたりは古くからの人がずっと住んでいて、物件に動きが無い場所だって)

ただの散歩ばかりしていても仕方ないので(いや、それはそれで健康に良いと思うが)、一家そろって車に乗って、近くの住宅地をうろうろと見物する。住んでいる人から見たら自分の家の前を車がゆっくりと通り過ぎるってのは結構怪しく感じるだろうなぁと思いながら、「この家いいなあ」とか「この趣味はちょっと...」と好き勝手言いながら見ているのは結構楽しい。また、これでようやく「家」には形、色、大きさ等々色々な物があるという事だけは見えてくる。

しかし、人の家を外から見ているのにも限界がある。と言って、いきなり呼び鈴ならして「お宅はいけ〜ん」なんて事をしたら、塩を撒かれて追い返されるならまだしも、ここ最近のご時世だと黙って警察に通報されてしまう事も覚悟しなければならない(アメリカだと問答無用で撃ち殺されるかもしれない)。行き詰まった所で次ぎに思いついたのは、「建て売り物件を見に行こう」と「住宅展示場に行ってみよう」という、ちょっとは進化して陸に這い上がろうとしている所辺りか、という結論である。

3.若さ故の過ち(又は運命の出会い)

いざ行くとなると、住宅展示場がどこにあるのかよくわからない(まあ、普段はあまり縁のない所だし)。そこでとりあえず新聞広告に入っていた、万博公園内のABCハウジング千里住宅公園に安直に出かける事にした。

出かける前、そこはA型のお父さん。展示場の広告に一通り目を通し、どのメーカを見るか、そしてそのメーカは展示場のどこに出展しているのかをきちんとチェックしたのであった。(それがそもそもの間違いであったのかもしれない)

この時点での奥様のお気に入りは積水ハウス、お父さんのお気に入りは住友林業という態勢で、いざ行かん住宅展示場へ!

展示場の受付でアンケートを書いて入場し、ふらふらと歩きながら「どこから見ようか」と問われたお父さんは、言わばここで運命の決断をしてしまうのである。
積水ハウスでもなく、住友林業でもなく、展示場の広告をチェックしている時にこれは絶対奥さんの好みであると確信していた「 スウェーデンハウス」に足を向けてしまったのであった。

予想通り奥様はスウェーデンハウスの建物を見た瞬間に表情が変わった。中に入っても至極御満悦で、この時点ではお父さんは「してやったり」と無邪気に喜んでいたのである。

しかし、誤算は既に始まっていた。

無邪気にモデルハウスの中を見て回る奥様をよそに、お父さんはしっかりと営業さんに捕まってたっぷり話を聞く事になるのである。

始めは「営業トーク」と思って話半分以下で適当に聞いていたお父さんだったが、分厚い断熱材を入れている壁を見たり、実際にドアを開け閉めして遮音性を試してみたり、スリッパ無しでうろついて足が冷たくなかったり、窓が3重ガラスであるのを聞いたりして、機能的面で興味を引かれてしまった(男の子だなぁ)。それらもあるけど、モデルハウスに入って新建材の臭い(接着剤やビニールクロス等)がせず、木の香りがするのがとても記憶に残った。奥様はもう、窓を縦にぐるっと回して 開けられるというのに心を奪われてしまっているし (^^; 。

でも、坪単価を聞くにあたって「坪70万は見ておいてください」と言われ、 相場を全然知らないなりにも目ん玉をひんむいてこの日は帰る事になるのである。

4.潜伏期>

それからもしばらくは、住宅展示場で色々なメーカーの家を見たり、メーカのモデルハウスを見に行ったり、建て売り物件を見に行ったり、新聞広告で間取りを検討したりする。

見る家も木造、軽量鉄骨、コンクリートと異なる建材で作られたものを見て、話を聞いて、体で感じてとしていたが、まず軽量鉄骨の家は、特に作っている所を見ると「いかにもプレハブ」って感じでたよんないし、建物自体のデザインはスマートなんだが、中に入ると妙に軽い、空っぽのような感じで落ち着かない。匂いもいかにも新建材、という感じであまり好きになれない。

外側の壁は鉄板を張ってシール材で目止めしているだけ。内側はグラスウールの入った薄いビニール袋を外側の鉄板との間にちょこんと置いて石工ボードで蓋しているだけなんて所もあって、これで防音と断熱なんかできるのか?と思ってしまった。また目止めのシール材は10年位の寿命なので、10年目のメンテナンスの時位にやり変えないといけないが、もちろん有料。で、きちんとメンテナンスしてどの位家は持つのかと聞くと、子供が独立する位までは十分持ちます(要は25年位)との事ですね。

コンクリートの家は中に入った瞬間の重圧感がすごい。洞窟に入ったようなトンネルの中にいるような、周りから巨大なものがおおいかぶさってくるような感覚に襲われる。こういう包まれたような感覚が好きな人なら別だと思うが、うちは夫婦共々この重圧感はちょっと耐えられないと結論した。ちなみにさすがにコンクリートは遮音性が非常に高く、開口部の防音さえしっかりしていれば中の音も外の音も聞こえないのでホームシアターには最適だそうで(でも思いっきりライブな音響特性になりそうだが)。また意外にも比熱が低いらしく、断熱加工をしっかりしないと太陽の熱ですぐに家が熱くなって、その熱で夜中まで熱いとの事。(夏場は地獄やん)。で、その断熱ってどうするかと言うと、コンクリートに直接発泡剤を吹き付けるんだそうで。(昔なら石綿なんだろうなぁ)

結局一番合うのは、やっぱり木造住宅。家に入った瞬間の空気の柔らかさと木の香り、心地よい包まれ感がとても落ち着く。

そこで木の家を中心に検討して行った所、ハウスメーカで建てるなら、純和風の東日本ハウス、しっかりした作りの積水ハウスシャーウッド」、いかにも木という感じの住友林業、機能性と木の香りがすばらしいスウェーデンハウス、機能性は良い一条工務店が候補に上がってきた。

そこから絞り込んで行くと、東日本ハウスはあまりにも和風すぎて今の自分たちの生活には合わなさそうだし、一条工務店は断熱等の機能はすごいと思うがデザイン感覚が古すぎる。新デザインのシリーズもあるけど、なんだか流行ものっぽくってポリシーが感じられない。積水と住友林業はまあ今風の普通の家で、スウェーデンハウスは逆に日本の普通の家にはならないという感じを受けた。

しかしハウスメーカで建てるにせよ建て売りを買うにせよ、如何せん金のいる話、資金の面で色々と調整がつかず、しばらく計画は中断するのである。


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